(このブログは、是非とも平成18年内に書いておこうと思っていたのですが、忙しさにかまけて延び延びとなり、気がつけば、年が明けて1月ももう終わり。締め切りをずるずる延ばしながら切羽詰ったところで原稿を仕上げる作家のような気持ちで(そんな上等なものではありませんが)とにかく、記しておくこととします。)
「ウェブ進化論」と「自治体をどう変えるか」
いずれも、昨年ちくま新書から出た本です。私が昨年中に読んだ中で最も刺激を受け、自治体関係者、情報政策に興味のある方その他の多くの皆さんに是非ご一読をお勧めしたい2冊です。
まず、「ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる」。
マスコミ等でも結構、持て囃されていましたのでご存知の方も多いかと存じます。94年からシリコン・バレーに在住し、日米の情報産業界と深く関わってきた現在株式会社はてな取締役の梅田望男さんの著書です。
「WEB2.0」や「ロングテール現象」など、専門家の間で話題になっていても余り世間一般には知られていなかったキーワードをわかりやすく解説しながら、情報社会の近未来を確実に予測してくれます。
また、現在急成長を遂げているグーグルいうユニークな企業の価値、成長の理由を「世界中の情報を組織化する」というミッションを与えられているからだ、と解き、グーグルは「世界政府が開発しなければならないはずのシステム」を作ろうとしており、「ウェブ上での民主主義を実現しようとしている」という分析により説得力を持って説明してくれています。
私は読んでいて、何回も「目から鱗」が落ちました。
「WEB2.0」の情報社会では、従来のマス・メディアからのいわば上から与えられる下りの情報提供だけでなく、ユーザーオリエンテッドな上りの情報が大量に行き交うこととなること(著者は総表現社会と名づけている)。そして、グーグルのようにインターネットの向こう側で集まってくる巨大な情報に対して上質の情報処理が行われるべくイノベーションが起こっていること(著者は情報発電所と呼んでいる)、などは、複雑怪奇に見えた情報産業のこれからの方向性を暗闇に懐中電灯を照らしたように明確に示してくれています。
昨年末のある新聞に2007年に押えておきたいIT関係の経済用語として「WEB2.0」、「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」、「ロングテール現象」、「ユーチューブ」の4つが挙げられていました。
まさにこの本が重要視して取り上げているものばかりです。
コンピューターはちょっと苦手という人にも、これからの情報社会の行方を占う上で必読の書としてお勧めしたいと思います。
次に、「自治体をどう変えるか」。
地方自治行政にずっと携わってきた私としては、地方自治関係の話題の本として当然すぐ入手して読ませていただきました。
少し読んだだけで、その中身の濃さ、充実振りが分かり、真剣にのめりこみました。
著者は東京都庁職員から学究の世界に入り現在、中央大学経済学部教授を務められている佐々木信夫さんです。
都庁時代の実務経験に裏付けられている所為もあるのでしょう。現状分析の正確さと鋭さ、これからの進むべき方向性についての示唆にとんだ提言など、奇抜さは全くなく、逆にその分、重量感のある非常に奥の深い読みものとなっています。
目次だけ記しても、
①変化する行政環境、②地方分権―国と地方の攻防、③政策官庁としての自治体、④自治体の政策活動、⑤議会をどう変えるか、⑥急がれる公務員改革、⑦深刻化する財政危機、⑧市町村の将来―合併後、⑨府県の将来―道州制、⑩国のかたちー分権国家
と現在の自治体を取り巻く課題はほぼすべて網羅され論じられているといっていいでしょう。
これからの地方分権時代をどう切り開いていくかに悩む自治体関係者には必読の本だと思います。
随所に大きく肯かされる記述があるのですが、特に、「これからは、公務員を「公共ビジネスマン」と捉えたらどうか。」とか、「明治、昭和の大合併は「小異を捨てて大同につく」とされた。しかし、平成の大合併は「小異を大切に大同につく」と考えるべきである。」などは、非常に深い意味合いを持った指摘です。
さらに、自治体議会のあり方については、これまで問題点、課題はいろいろ言われても、「どうするべきだ」という議論はほとんど行われてきておらず、是非とも本書が大きな波紋を巻き起こす一石となって欲しいと願っています。
この2冊もそうですが、最近は、「国家の品格」や「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」など、新書のベストセラーが多く出るようになりました。
読みやすくて、勉強になる。私も新書は好きでよく求めます。誇大広告まがいの「表題」に振り回されることも多いのが反省点ではありますが。
ところで、何故この手の本を「新書」って言うのでしょうか?
